かりそめの恋人



私には、好きな人がいる。

その人は、朝に通勤電車でたまに見かける車掌さんだ。
年は私と同じくらいで、かわいいかんじの、男の人だ。
まだ勤めはじめたばかりって感じで、制服と顔が合ってないのが特徴だ。

毎朝、彼を通勤電車で見かけると、一日頑張ろうって気になれる。

ある日、通勤途中に気分が悪くなって、ホームに座り込んでいたら、
車掌さんに声をかけられた。

「大丈夫ですか…?
ご気分が悪いんですか?」

私が、彼だと思ってびっくりしながら頷くと、車掌さんは続けて言った。

「車掌室にソファーがあるので、よければお使い下さい」

私は車掌さんの肩を借りて、車掌室に入った。
私たちの他に、誰もいない部屋だった。

仕事を片付けないといけないからと言って、車掌さんはドアの向こうに消えた。
ソファーで横になっていると、私は段々気分がよくなってきた。

ドアが開いて、さっきの車掌さんが入ってきた。私に目をやり、話しかける。

「いかがですか?お客様」

「…大分楽になりました。
ありがとうございます」

 そう答えながら、車掌さんの優しい目を見たら、
私が彼を想っている事を伝えなくてはいけない気がした。

「私、いつもこの時間に電車に乗るんです。
はじめて車掌さんを見た時、とてもいいかんじの人だなぁって思いました。

前に、おばあさんに、親切に乗り換えの案内を教えてあげてるのを見ました。
おばあさんが何度も聞き返したのに、嫌な顔しないで教えてて、えらいなぁって…。

あの、す、好きです!」

そこまで一気に言って、車掌さんの方を見ると、ぽかんとしてた。

「…俺、彼女いるんだけど…」

「そ、そうでしたか!」

ガラガラと、車掌さんと付き合うという妄想が、音を立てて崩れていく。
頭の中で車掌さんの腕の中にいる彼女が、笑っていた。

ソファーから起き上がって、靴の中の親指に力を込めた時だった。

…私、別に車掌さんを独り占めしたいわけじゃない。
今だけでいいから、彼のものになれないだろうか。

「…あの、もしよかったら…の話なんですが」

そう言って、車掌さんを見ると、私をじっと見ているのが分かった。

「…はい?」

「─────私を、抱いてくれませんか?
私のあそこを、ぐちゃぐちゃにして欲しいんです!」

車掌さんは、そばにある電話に手をやった。

「あ、え…?
ごめんなさい、謝りますから、通報しないで…!」

私が車掌さんにすがりつくと、肩に手を置かれた。

「内線ですよ」

「は?」

「あ、アズマです。
ええ、今日、急用が出来まして…昼から休めませんか?
…はい、有給で…」

しばらく車掌さんは、上司らしい人と話してた。
車掌さんは受話器を電話の上に置いて、私のほうを見た。

「ホテルに行きましょうか。
…ここでは無理だ」

「え?」

「ぐちゃぐちゃにされたいんでしょう?」

迷子の子供に語りかけるように、彼は優しく微笑んだ。



 車掌さんは、職場から私と一緒に歩けないからと言って、ふた駅先の改札口で待ち合わせをした。
改札で待っていると、私服に着替えた車掌さんが手を振って近づいてきた。

白いシャツにジーンズ姿で、首にストールを巻いているのが顔に似合ってて可愛かった。

「ごめん、待った?」

「……大丈夫です」

「何か食べようか。
おごるよ」

白い建物のフレンチレストランで、食事が運ばれるまでの間、
互いの名前を教えあった。

あずま 勇人ゆ うとです」

車掌さんは、ぺこ、とテーブルに顔がつきそうな位のお辞儀をした。

「美沙…です」

私も、軽く会釈をした。

「上の名前は教えてくれないの?」

「…ごめんなさい、今日だけだと思うと…」

私は、今日休んでしまった会社に、二年前から勤めていることや、家で飼っている犬の話をした。
彼も犬が好きらしくて、意外なほど話がはずんだ。



 彼が、ホテル街に足を向けた時、私は追いつくために彼の手を握った。
車掌さんは、私の方を見ずに、手を握りしめたまま、ピンク色の建物に入って行った。

入り口を入ったところの部屋にはパネルがあって、色んな部屋の内装と部屋番号が映っていた。

暗めの部屋は使用中で、明るい部屋は空いてるみたいだった。
好きな部屋を選んでいいよ、と言われたので、私はオレンジ色の寝具の部屋のボタンを押した。

オレンジ色の部屋に入ると、すぐに上着の中に手を入れられた。
ブラの背中のホックを外され、前側から胸全体を揉まれた。

「あっ…」

真正面にいる車掌さんの口が、開いた。

「こんなに乳首をかたくして、潤んだ目で俺を見て…。
誘ってないなんて、言わせないよ…」

車掌さんの声がかすれていたので、ドキドキした。

「やん、んっ…」

ぎゅっと、乳首をつままれたので、声が出てしまった。

車掌さんが私の肩に腕をまわして、
気づいたらキスをされてた。

「んっ」

唇を重ねたら、すぐに舌が入ってきて、こういうキスをしょっちゅうしているんだと思った。
気持ちは戸惑っているのに、あそこがじわっとしてきて、私は腰をくねらせた。

「美沙ちゃん…って呼んでいい?」

「はい…」

「俺は、勇人ゆうとって呼んでもらえると…」

「────車掌さん。
車掌さんって呼ぶのがいいです」

「おかしな人だね…」

ふふ、と笑いながら、車掌さんの手がショーツの上から、私の割れ目を探してる。
それがあったかくて、こそばゆくって、体から変な匂いが出てるような気がして、私は困った。

「どうしたの…?
何か気になる?電気消そうか」

「ううん、ち、違うの…
私、変な匂いしてないか気になって…」

そう言うと、車掌さんは、私の首に鼻を近付けた。

「ううん、美沙ちゃんは、いいにおいがする……
…甘酸っぱいよ…」

そう言って、車掌さんは乳首をつまんでいる指先に、力を込めた。

「あぁん…」

「すごく、感じやすいんだね…。
ああ、ここも、そうなのかな…」

片手でショーツを下ろされた。
膝の辺りで止められて、すごく恥ずかしくなった。

頬を染めた私を見て、彼は呆れたように言った。

「何、今さら赤くなってんの?
初対面の男に、抱いてくださいなんて言ってたのに」

「だって…。
車掌さんが欲しかったんです。
…会社に行く時いつも、あなたの事ばっかり考えてました」

「今日、気分が悪かったのは、お芝居だったの?」

「あれは、偶然です。
まさか車掌さんが来てくれるなんて、思ってなかった」

「そう…よかった」

熱いひだの間を開かれて、車掌さんの指先が私の中に入ってきた。

 好きな人が、私の体を大事そうにさわってくれる。
付き合ってはもらえないけど、今だけこの幸せに浸っていようと思った。

「美沙ちゃんのなか、あったかいね…
胸もやわらかくって、下からはいやらしい蜜があふれてきてる…」

奥に、指を入れられて、抜き差しされる。
車掌さんの指は長くて、圧迫されるのが気持ちよかった。

向かい合わせで立ってさわってくれるうちに、車掌さんは口を開いた。

「俺の彼女は、まだ高校生で…、処女なんだ。
俺は彼女にキスしか出来ない」

「…私は…?」

「欲求不満で、明日にも彼女を襲ってしまいそうな俺の目の前に現れた、
女神さま、かな」

そう言って、彼は指の数を増やした。

親指が、一番私が感じる場所にぴったりあたって、高い声が私の口から洩れた。

「…いい声。
もっと啼いて…」

「あぁ、っ…!」

しばらく私は快感に浸ってたけど、ずっと立った状態なのが気になった。

「車掌さん、立ってるの、つらいんだけど…」

「うん、ベッドに行こうか」


私たちは、急いで服を脱いで、ベッドに飛び込んだ。

仰向けになった私の上に、車掌さんがかぶさってきた。

片手で乳首をつままれて、もう一方の乳首は車掌さんの口の中におさまった。
車掌さんは、残りの手で私の秘部をほぐしていく。

「ぃやぁ…、ああっ!」

すごく気持ちいいのに、なぜかいやって言ってしまった。

車掌さんは、乳首をつまんでる手に力を込めた。
つままれている乳首に、気持ちいい刺激が入る。
背中とあそこが疼いて、耐えきれなくなってしまう。

車掌さんは、苦しそうな顔をして、私を見た。

「俺を否定しないで…
いいって、言って…」

「い、いいっ…です!
車掌さぁんっ、気持ちいいっ…」

そう言うと、車掌さんは照れくさそうな笑顔を見せた。
そして、体を起こして、私の腰に彼のものを埋め込んだ。

「俺をあげるから、
きみに全部あげるから、受け止めて…」

「はい、車掌さん…」

彼のものは、すごくかたかった。

「美沙ちゃんっ…
美沙、ちゃんっ…」

車掌さんが、私を突き上げながら、名前を呼んでくれるので、まるで彼女になったような気がした。



私も彼も、気持ちのよい波に呑まれて、チェックアウトの時間が来た。
会社帰りにしては、少し早い時間だ。

「…どうする?泊まっていく?
俺は明日、非番だから、どっちでもいいよ」

「帰ります。
急に泊まると、お母さんが、心配するから……
嘘をつくのも、イヤだし。
いつも帰る時間まで、買い物でもしてます」

ベッドの周りの散らばった服を拾いながら、私は答えた。

「…車掌さん、ありがとうございました。
嬉しかったです」

まだ裸のままの車掌さんが、ベッドでにっこりと笑って言った。

「俺も、楽しかったよ。
でも、俺はきみを車掌室に運んだ時、かわいい子だなって思ったよ。
誘いに乗った後で言うのもなんだけど、
あんまり、初対面から安売りしないほうがいいんじゃないかな」

「…そうですね。
私、普段はこんな事言わないんですよ。
信じてもらえないかもしれないけど、ごく普通の女なんです。
たまたま…、車掌さんと話せる機会がこれきりだと思って、焦ってしまったんです」

「信じるよ。
またね、美沙ちゃん」

そう言って、車掌さんは片手を差し出した。
私はその手を握り、彼の頬にキスをした。

「さようなら、車掌さん…」

あまり化粧が落ちなくてよかった。
そう思いながら、身支度を整えて部屋をあとにした。

家に帰ろう。
しばらく車掌さんの事で頭がいっぱいだろうけど、
新しい恋を探さなくちゃ。

私は一人で、ふかふかの絨毯を踏みしめ、この恋を終わらせた。

                 
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                 ■



あとがき

 お久しぶりです、kiyonyaです。
やっと自分のサイトにUP出来そうで、ほっとしています。

同じタイトルのダークグリーン版を、したの方にUPしてたんですが、
この話も同じタイトル。それしか思いつかなかった…。

小説投稿サイト「ムーンライトノベルズ」に載せたんですが、あまり反応がなかったです。
うーん、やっぱり不倫がいけなかったのかな…?

こういう風に、体だけの関係というのも、フィクションの世界ではありなのでは…?
とか思うんですが。

2013.March 20 kiyonya拝

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